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2015/06/08

かなりの想定外


「想定外」という言葉。震災以降よく耳にするようになった。否定的な

意味で使われることが多い。
僕は事業をたちあげて多くの「想定外」に

出会ってきた。そしてこのアドバイスに助けられてきた。




「想定外のことが起きることを、想定しておく」



ノーガードはもろに衝撃を受ける。あらかじめ心の準備をしておくと、

ショックは少なくてすむ。
これを知恵として知っていることと、覚悟

として腹に落としていることは、確かな差がある。


腹に落とすには、経験を重ねるしかない。



ロンドン五輪に沸いた2012年の夏。ある日の早朝のことだった。

突然、オフィスを兼ねている自宅に、
某県警サイバー犯罪防止課の

捜査員がやってきた。寝起き直後でまだ頭が働き始める前、玄関で

二通の
令状を読み上げられた。被疑者は「不詳」だが、僕の会社に

対する令状だった。



5分後、段ボールを
手にした捜査員8名が自宅に入り、家宅捜索が

始まった。不正アクセス防止法違反の容疑だった。
文字どおり寝耳に水。

いや、氷水というべき出来事。全く身に覚えがなかった。




(あとで分かったことだがシステムを預けていた会社の内部紛争の

飛び火だった。そのあと直ちに
システム会社を変更した。)



パソコンや携帯など一切の電子機器類、手帳やメモ、定款や契約書

など40数点が、つぎつぎに
段ボールに詰められ押収された。

頼んだ覚えはないが、労せず断捨離に成功だ。時計を見ると
午後2時を

まわっていた。事情聴取は七時間もかかっていた。




「今度はそうきたか」



捜査員が帰ったあと、ガランとした家の中を茫然と眺めながら

つぶやいた。喉が渇ききっていたことに
その時気づいた。朝からまだ

水一杯口にしていなかった。




容疑が完全に晴れるまで三ヶ月。捜査の名目で自分のサイトが停められた

こともあった。
悔しかった。メンバーには緊急メンテナンスと説明するし

かなかった。長い三ヶ月だった。




あれから三年。いま思えばあれは、注射のようなものだった。

事業のさらなる成長に必要な注射。
そして三ヶ月は、注射後の必要な

安静期間だった。




自暴自棄にならず、結果としてそういう期間に出来たのはなぜか。

創業から七年間、大小さまざまな
「想定外」のことを経験していたから

だろう。元々自分に備わっていた力ではない。




そしてこの事件にはもう一つの「想定外」があった。友人の会社にまで

家宅捜索が入ってしまったのだ。
従業員も何が何だかわからず混乱した

にちがいない。彼には善意で色々と事業の協力をしてもらっていた。


それに応えるどころか、とんでもない迷惑をかけてしまった。そのとき

友人は、動揺する社員に対して
即座にこう話したそうだ。



「根本が間違いを犯すはずがない。それは自分が保証する。

これはなにかの間違いだから、
とにかくまず落ち着くように。」



彼は社会人一年目からの同僚。いまはお互い会社を離れて時間が経って

いた。それにも関わらず
彼の熱い言動。なんと言っていいのか、言葉が

見あたらない。
これから僕が生きていく上で大事なものが、一つ増えた。

想定外のことがマイナスばかりではない。

これはかなりの想定外だった。


 

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