石音インストラクターブログ

2015/08/09

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記 ~台湾編その4~

〜前回までのあらすじ〜

無策のブタ(役なし)でフォールド(降りる)宣言をした長谷イン。
明日への策を練りながらも一向に改善しないコミュニケーション能力に不安を抱えながら
戦場を後にすることに。

このまま本当に何もできずにただのブタ野郎(役立たず)に終わってしまうのか。
それとも・・・・!?


皆さんこんにちは。
囲碁歴もうすぐ12年、彼女いない歴4年の長谷インです。
彼女なんていたことあったんだ、って自分で思う今日この頃ですが
「こんなカオナシとお付き合いしてくれるなんて、千(千尋)のような人だったんだなぁ」
と、この旅行記を書きながら思い返す次第です。

今回は長編の旅行記となってしまったわけですが、まだまだ先の長い展開が続きます。
読み飽きないように下に今後のタイトル(予定)を載せておきましょう。

台湾編その4「(二日目後半戦)そうだ、ポエムを書こう!」
その5「海峰棋院、ナショナルチーム」
その6「うれしいとびっくり」
その7「お礼状は三か国語」
その8「魔境九份、地獄へのいざない」
その9「Time is life」
その10「再见!機内食は未来への希望」

※このブログは石音の提供とご覧の皆さまの応援でお送りしています。
(席亭の彼女、IGOホールディングス若柳イン、Q位者の集いメンバー、囲碁友達)

「(二日目前半戦)そうだ、ポエムを書こう!」

台湾棋院(とおぼしきビル)を後にした長谷インは二つの選択肢を考えていました。
一つは宿に帰り、翻訳の準備をして明日への態勢を万全にしておくこと。
もう一つは別の取材地に赴くことです。

時間は午後4時くらい。
朝から行動していたにも関わらず5、6時間を散歩とネット検索に当てていたので、
残された時間は多くありません。なぜなら宿に帰っての翻訳作業、というより準備には
何かと手間が掛かるだろうと予想していたためです。

"オフラインでも使える翻訳アプリさえダウンロードできれば、形勢は一気に逆転するはずだ。"

この一事を頼りにするしか、もうほかに手立てがありません。
今からほかの取材地へ向かうのは策もなしに二の舞いを踏むことになるとお思いでしょうが、
一か所だけ当てがあります。

それは「棋聖模範棋院」なる碁会所。

ここは日本の方も腕試しに訪れるということ(ネット情報)
さらに日本語を話せる方もいるということ(ネット情報)
で有力な取材候補地の一つです。

何よりも碁会所というのがミソなところです。
どんな展開になろうとも碁石さえ握れれば長谷インに敗北はありません。
迷った挙句、棋聖棋院に行くことにしました。

さすがにここで宿に帰ってしまっては二日目を丸々棒に振ることになります。
それは帰国後の旅行記がノルマになっている長谷インにはハイリスクな選択と言えるでしょう。
(とにかく行動すること、死んでも騙されても良いから何かしらエピソードを作ること。)

そんな思いを胸にいざ、棋聖棋院へ足を運びました。
と、その前に重要な情報を付け加えておきましょう。
この時点で長谷インは朝から何も食べていません。

時刻は午後4時、5時ですよ。
実はもう暑くて暑くて全然食欲が湧かなかったんですね。
それでも時々お腹が空きます。

空いては暑くて食欲がなくなり、またふとしたときにお腹が減ってきます。
「碁会所に行く前にまずは腹ごしらえだ!」
ということで「棋聖模範棋院」の看板の写メだけ撮って、食べるところを探しに向かいました。
しかし、まあ・・・。

お察しの通り、その通りです。
また「お店に入ったら死んでしまう病」に侵されてしまいました。
皆さんはお店に入っても死なないと思いますか?
自分としては死ぬことになれば本望です。
旅行記は三途の川で書いて、あとは成仏すれば良いだけの話です。

しかし現実的には日本とほぼ変わらない台湾でそうそう死ぬことはありません。
一番恐ろしいのは、眼二つの窮屈な格好で生かされることです。
お店に入ってオタオタ、モタモタした挙句、店員さんにそれなりの対応をされては
武士の恥というものでしょう。

そんなチンケなプライドを捨て切れずにまたもや街をウロウロしています。
「もうどこかのチェーン店でいいや。」
この旅行記には「長谷インの食レポ」も載せようと思っていたので、
チェーン店での妥協は残念でなりません。

台湾まで来てまさかマックに入ることになろうとは・・・ということでマックに入店しました。

(ウィーン。)

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

(ウィーン。)

入って20秒で外に出ました。
チェーン店で妥協するつもりでしたが、そもそも日本のマクドでもよう入りませんわ。

メニューが上のほうに表示されているのは日本と同じです。
いつも目が悪くてレジ前のメニュー表を見ているのですが、それがなかったんですね。
あったかもしれませんが、ないように見えました。

とにかく白石に近づけば攻められて苦しくなるという下手心理がいかんなく発揮されて
しまったわけです。結局、食事は諦めました。

碁会所に向かう途中で吉野家やほかのチェーン店もちらほら見かけましたが、
保留、保留の気持ちで最後は食事まで保留にしてしまいました。
しかしこの道中で見つけた吉野家には後々入店することになります。
「神の味」と評すべき一品をこの吉野家で味わうことになるとは、このときはまだ
知る由もありません。


今、ここまで書いて全然話が進まないことに焦りを感じています。
ここまでの話が全体の約10分の2くらいです。
ここから棋聖棋院〜台北砂漠まで書くとなると、かなりの文量になります。

某席亭の彼女さんに話が長いとか、某記者の囲碁友達に文章がくどいとか散々言われましたが、
今回もここからが本題になります。

その前に皆さんに一つ留意していただきたいことがあります。
それはたいして行動してないために、話の内容が薄いということです。
旅行記その1〜3までを読んでいただいた方には分かると思いますが、
これまでのあらましをまとめてみます。

その1「機内食は未来への暗示」
・打ち合わせでのグーグルアース発言(失言)が発端で台湾行きが決まってしまうことに。
・何の準備もしないことで後々やばくなるとも知らずに意気揚々と台湾に到着。
・機内食の「チキンorブタ?」が後の運命を暗示していたとは。(臆病者か役立たずか)

その2「到着後〜二日目、ひとならざる者」
・空港から市内に向かうバスに乗るのに悪戦苦闘、ここで言葉の壁を思い知らされる。
・宿が(貧乏)仕様だったがそれは想定通りで大いに満足、ガリガリ君と爽のお値段が
2倍弱とこちらは大いに不満を感じる。
・晩飯を食べに外に出るもお財布と勇気を紐で縛っているためなかなか入れず、
やっとの思いで入ったところが普通にまずかった。

その3「二日目前半戦、ビーフorチキンor・・・?」
・Suicaの代わりになる悠遊カードのチャージがうまく行かず、おばちゃんに声をかけられるも
「あ、あう・・・あ、あ。」とひとならざる者(ただのカオナシ)の対応をしてしまう。
・ネット情報で得た台湾棋院の場所へ向かうも探し回って2時間、いざ扉の前に立つまでに
3時間も掛かってしまう。
・結局、翻訳機なしでは勝負にならないことを悟って撤退することに。

まとめると各回、三行で終わってしまいますよ。

台湾から命からがら帰ってきて、まず関インに旅行のあらましを話してみました。

長谷イン「いや〜もう大変でしたよ、迷子になって迷子になって迷子になって・・・
計20時間以上は歩きましたね。」
関イン「いやいや、タクシー使いなよ。時間の無駄でしょ。」

この一言で心がKOされましたよ、ホント。
確かに台北のタクシーが安いのは行く前に調査済みでしたが、そんな発想は
微塵も出てきませんでしたね。

あと「日本語を話したい大学生とアポとって飯でもおごって同行すればいいじゃん」って、
そんな発想は微塵も出てきませんでしたね。

確かにタクシー使えよって話で、日本語を話したい大学生とのアポも
事前にできなくはない話だなと思います。

”駄菓子菓子(だがしかし)”

文字通り命がけで帰ってきてそんな正論言われてもなぁって話ですよ。

やはり事のあらましだけ説明するとそういう反応になってしまうわけですね。
27歳でどうのこうのと言われましたが、初めては皆子供ですよ。
海外初心者、囲碁以外はポンコツであるという前提の元に話を進めないと皆さんに
正しく伝わりません。例えるなら、白模様に単身突っ込んでいく黒石です。
ヨミなし、利きなし、当てもなしってところでしょうか。

ちゃんと心理描写や細かい状況を説明しておかないと、どんどん愚形で目も当てられない状況に
陥っていく長谷インをうまく表現できません。

「台湾旅行楽しかったぁ( *´艸`)ああだこうだぁ(^_-)-☆」
くらいのテンションで書きたかったんですよ、本当は。

閑話休題。さて、ここからが本題です。

これまでコミュ障が祟ってコンビニ以外入れなかった長谷インがついに
碁会所の敷居を跨ぎました。

「あ、あう・・・あ、あ。」(声にならない音)

相手も一瞬「え?」ってリアクションです、見た目では台湾の方と区別できないですから。
オタオタしている姿を見て「日本人?」と声をかけてもらったので、「はい。」と答えて
何とか入ることができました。情報とは違い、片言の日本語しか話せる人がいません。
日本人の日本語レベルを10とするなら1か2くらいのものです。

受付のおばちゃんが「〇〇さん」(台湾語)と日本語しゃべれるおじさんを呼んでいましたが、
大同小異でほとんどしゃべれません。しかし良いのです。
もうここは黒模様の中、長谷インのホームといっても過言ではありません。

だってここは囲碁を打つところでしょう?
長谷イン+囲碁=何か良く分からない自信、水を得た魚、猛暑日の麦茶のようなものです。
散々アウェイのなか悪戦苦闘してきましたが、ついに長谷インのターンがやってきたわけです。

「俺のターン、ドロー!」(某漫画より引用)

やっと自分のターン、ようやく勝負カードの一枚目を引くことができたわけです。

先に席に案内されそうだったので、席料がまだという行動
(ただじっとしているだけ)をとりました。

<理解度> 碁会所のシステム>>マック

ここまでくれば、もう余裕の態勢ですよ。
うちの庭みたいなもんじゃて、ほっほっほ。

席に着くと打ち慣れてそうなおじさんが対面に座りました。
「英語しゃべれる?」(英語)
「ちょっとだけ。」(英語)
「娘が東京に行ってるんだよ。」(めちゃくちゃ流暢な英語)
「Oh!東京!」(めっちゃ良いリアクション)
「〜〜、東京ユニバーシティに行っててさぁ。」(超自慢げ)
「?」(いきなり反応が止まる)

おじさん「東京だよ、東京。」
長谷イン「Oh!東京!」
おじさん「東京ユニバーシティだよ。」
長谷イン「?」(真顔)
おじさん「???」(不可解)

要は娘が東京の大学に行ってるっていう世間話をしてくれたわけですが、
「ユニバーシティ=大学」というのが分からなかったんですね。
娘が東京に行ってるってところでめっちゃ良い反応したのに、
大学ってところで「?」←これですからね。
最後まで伝わらなかったので、おじさんもお手上げみたいでした。

さて、そんなこんなでいよいよ対局開始です。

打つ前に「おやっ?」と思ったのが、碁笥の蓋がないことです。
台湾の囲碁は中国ルールのようで、取った石はアゲハマとして数えず
相手の碁笥に返します。ほかのところも蓋がなかったのですが、
唯一「海峰棋院」だけは蓋がありました。

海峰棋院は台湾棋院に並ぶプロ組織で、国内棋戦も運営しているところです。
それは次回以降のお楽しみとして、いよいよ台湾での初対局に臨みます。

(旅行に行く前の打ち合わせ)

「台湾に武者修行に行ってきます。自分を磨いて一目強くなって
帰ってきます!(人間的に)」

「万が一、何もできず何も為せなかったら碁会所で一目強くなって
帰ってきます!(物理的に)」

現状、何もできずに碁会所にいるわけですからね。
これはもう、いざとなったら打ちまくってアマ七段レベルになるしかありません。
ちなみに旅行中はずっとアマ六段と名乗って対局しています。

ここでも「何段?」と聞かれたので、「六段」と自信満々に答えています。
ちなみに日本では教室、碁会所、囲碁会の段位が甘いので、場所によっては
七段で通用してしまいます。

台湾は日本と違って段位が辛いだろうと思いましたが、一応免状を持っているので
六段を名乗りました。

対局の内容はさておき、対局中のおじさんのマナーがまぁひどかったですね。
机というか盤を置いているテーブルに「バシ、バシッ」と石を叩きつけているので
何かと思いましたが、あれは麻雀牌を叩きつけている動きと同じでした。
麻雀好きな紳士の方は牌でそんなことはしないと思います。
碁会所慣れしている自分でも「ちょっとなぁ」と感じましたね。

特に最近は教室で「モナリザ」を合言葉に皆さんの姿勢を正していますから、
余計に気になってしまいました。
もちろん長谷インはモナリザの姿勢です、対局中にこれを崩すことはありません。

対局は互先で、長谷インが勝ちました。
相手の方は五段くらいの実力でゴリゴリの力碁でしたね。台湾は日本と比べて圧倒的に
力碁が多かったです。対局中、他の方が来てあれこれ言ってましたが、
何を言っているのか手に取るように分かりました。

「ここをこうしてああして、どうなの?」
「いやいや、ダメでしょ。そこはああなってこうだよ。」

言葉はまったく分かりませんが、盤上のことは良く分かります。
二人のリアクションを見ていると日本の碁会所のおじさんと何ら変わりありません。
そのうち後ろから歌声が聞こえてきました。
何だか本当に日本の碁会所(東京郊外)にいるような気分になってきました。

初戦のおじさんがギブアップしたため、もっと強い方との対戦になりました。
結果は互先で一勝一敗でしたが、この方はまあ強かったですね。

おそらくアマ七段、自分よりも確実に一子上の強さを感じました。
周りを見渡してみると平均棋力が初段〜三段レベルのようです。
東京郊外の碁会所なら平均棋力3級〜初段が良いところでしょうから、
2子くらいは強い印象です。対局は特に問題ありませんでした。

しかし困ったのは整地です。
整地の仕方が日本ルールとはまるで異なります。
そもそもアゲハマは相手の碁笥に戻しますし
(実際はいちいち戻さずに碁笥の前に置いている)

中国ルールでは最後に石を盤上に埋めて計算します。
ところがアゲハマは最後に碁笥の中に戻したのに、盤上の整地は日本のように
四角い空間にしています。もう何が何だか分からなかったので、整地になると
オタオタして全部お任せしてしまいました。

一局目はおじさんが何目勝ちだよ、と必死に伝えようとしてくれましたが、
このときはコミュ障のカオナシ(面目ない)にまた逆戻りです。
二局目以降は全部中押しだったので、何とかなりました。
三局打って時間はもう午後7時を回っていました。
もう十分打ったので帰りたかったのですが、対局以外ではうまく意思表示できません。

「相手がいないからちょっと待ってて。」
「あ、いや・・・。」
「Go home.」(小声)

相手の言いたいことはボディーランゲージでだいたい伝わるのですが、
こちらは手足をもがれたオタマジャクシのようなものです。

(そういえば、GO home.って文頭に持ってきたら帰れ!って意味になるんだっけ?)

中国語はもちろんのこと、英語もこの程度のレベルでは到底まともなコミュニケーションは
取れません。結局、四段くらいのおじさんともう一局打って、何とか「もう帰ります」
の合図で棋聖棋院をあとにしました。それにしても最後のおじさんは姿勢がよかったなぁ、
碁の内容にもそれが如実に表れていました。

ここの碁会所はネットで調べて行きましたが、写真とは全然印象が違いましたね。
時間帯が夜だったこともありますが、何となく場末の碁会所といった雰囲気でした。
もうちょっとライトな雰囲気で、活気があるところを想像していました。
まさかここまで日本と同じとは。

この旅行の目的は囲碁が盛んな台湾を取材することです。イメージではもっと若い人が
たくさん打ってるのかなぁと思ってましたが、やはり現地で確かめないことには分かりません。
ただ一人強そうな若者が棋譜並べをしていましたが、彼との対戦は望めませんでした。

さて、と。

対局も十分したし、そろそろ恒例の晩飯タイムに入りますか。
それにしても書くのに疲れてきたので、一旦ここで区切ります。

台湾編その4「(二日目後半戦)そうだ、ポエムを書こう!」(つづく)

 

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