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席亭ブログ

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目のつけどころの鍛え方(13-16完)

(13)
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自分の興味の「外」を案内してくれる人といえば、
僕は囲碁仲間が思い浮かぶ。皆さんはどうだろうか。

趣味の世界は、上司部下といった「縦」、同僚友人といった「横」
の関係からはなれた「斜め」の関係ができやすい。

家庭でも職場でもない居場所をサードプレイスというが、
この斜めの関係の人はサードパーソンだ。
誰にもすぐ4,5人は思いうかぶだろう。

斜めの関係は、細く長く続きやすい。世代を越えることも
かんたんなので意識して大事にするといい。
目のつけどころが鍛えられる。

僕のサードパーソンの1人を紹介しよう。

驚くほどの軽さと美しさを追求したバッグを売るヨネちゃんは、
二回りほど年上の囲碁仲間として15年の付き合いだ。

パソコンの家庭教師事業を一緒に立ち上げて
ビジネスパートナーだったこともある。
僕のサイト「石音」のメンバーでもある。

自分らしさは自分でつくろう。

100万通りの組み合わせができるバッグを通して
シンプルなメッセージを発信し続けるヨネちゃんは、
僕の目のつけどころの師匠だ。

つれへのプレゼントでヨネちゃんのバッグを購入したのを機に、
バッグづくりへの、狂気ともよべるこだわり、あふれる想いを
直接伺う機会が増えた。

興味の「外」の分野で上質のシャワーを浴びることは、
極上の幸運だ。

モノづくりは情熱と時間の関数なんだよ。

と話すヨネちゃんの笑顔が忘れられない。 「記:根本」

*ヨネちゃん https://upla.jp/about


(14)
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今年の年末年始は、ちょっと「特別」だった。
何が特別かというと、いつもよりすこし「普通」だった。

もっとも「ハレ」の時である正月が、
めずらしく「ケ」にちかよった。

僕の側の家族で集まることもなければ、
どこかに旅行に行くこともなかった。

思えば年末年始に両親が家にいないのもはじめてだ。
グアムクルーズに旅立つ両親を横浜桟橋で見送った。
弟家族もサンディエゴの妹の家に行っていた。

ありふれた毎日の生活を大事にして、
それに愛着を持とう。

生活の価値を「ハレ」に求めるのではなく、
「ケ」の充実に求める人生観。

いつもより普通な正月に教わった。


(15)
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目のつけどころを鍛えるには、たくさん目をつけるといい
と話をしてきた。

「目をつける」のは、自分の常識と非常識の間にある分野だ。
そこを案内してくれる人や本の大事さにもふれた。

しかし実は、「たくさん目をつける」だけでは不十分だ。
興味を全方向に「発散」して目をつけるだけではたりない。

あとなにが必要か。

発散のあとの「収束」だ。

目をつけたことを、いま一番興味のある分野に収束する。

発散→収束→発散、の繰り返しが、目のつけどころを鍛える。

少し前の話をしよう。
寿司屋のカウンターで大将がこんなことを言っていた。

―今日のフグはうまいよー。5日寝かしたからね。

ん?鮮度が命の寿司屋で、寝かした日数自慢?
しめさばじゃあるまいし…。

僕の疑問を察してか、大将は笑いながら続けた。

―鮮度が抜けると、質が残るんだよ。
   だからうちではフグはすぐに出さないの。

なるほど、そうか。
魚が持つ「質」を出しきるために
わざと鮮度を落とすのか。

食のプロではない僕がここに目をつけるのは「発散」だ。
その時は「収束」に向かうこともできた。

今一番興味のあるキーワードは「シニア」だ。

三年前に出したエッセイ『目のつけどころはシニアに学べ』
では、シニアじゃない位置からシニアをポジティブに語った。

寿司屋のカウンターで大将のことばを聞いたとき、
あるシニア友人の顔がうかんだ。

まったくもって失礼ながら、多少鮮度は落ちているものの、
その分、質の輝きが増している方だった。


(16)
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考えてみると、「目のつけどころの鍛え方」は
「眼の鍛え方」に似ている。

近くばかりを見ていると眼は悪くなる。
遠くを見たり近くを見たりして、網膜にピントを
あわせる筋肉を鍛えるのが眼にいいらしい。

自分の興味のあることだけに閉じこもらず、
積極的に意識を広げたあと、得たものを
一番関心のあることに集めていく。

「興味の発散と収束」を繰り返すことで、
目のつけどころがだんだん良くなる。

本格AI時代の幕開けとともに、
目のつけどころの重要性は日々増している。

何を知っているか、より、どこに目をつけるか、
が問われる時代が始まった。

ひとあじ違うオリジナルな、そして面白い人生を
送るには、目のつけどころが勝負なのだ。(完)