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席亭ブログ
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囲碁 教え方
子供のころ言われたこと。大人になって大事なこと。
囲碁では最初、「考えて」打つように教わる。
自分なりに考えて打って、失敗して、反省して成長する。
そのサイクルをまわす。上達して高段者になると、直感が磨かれ、
だんだん考えなくても打てるようになる。プロは考えなくてもほとんど打てる。
考えないで打てるからプロともいえる。「考えなさい」からスタートして、「考えなくても打てる」がゴールだ。
テニスでは最初、どこに力を入れるといい球が打てるか、練習を繰りかえす。
上達すると、今度は力を抜く技が必要になる。プロの試合を見ていると、
力の抜けた柔らかいショットが打てる人ほどランキングが高い。
力を入れる方向ではなく、力を抜く方向でレベルの差があらわれる。
「最初に教わったことの反対を意識するといい」
これは趣味やスポーツの話だけではない。
「ひとの言うことをよく聞きなさい」子供のころを思いだしてみると、僕は、学校でも家でもそう言われた。
うわの空で返事をしてさらに怒られた。
これが囲碁で「考える」、テニスで「力を入れて打つ」になる。
とすれば逆はどうなるか。「ひとの言うことを聞かない」
言うことを聞かないとは、条件反射で「はい」と反応しないということ。
よく考えずに相手の意見を鵜呑みにしないこと。とくに上司や目上の人、
そして「すごい人」の意見に要注意。
いつまでもひとの言うことをよく聞いていてはダメだ。
最初から耳を傾けないのも、コミュニケーションとして問題だ。
だからこうなる。「しっかり耳を傾け、そしてひとの言うことを聞かない」
「忘れちゃいけません。覚えておきなさい」子供の頃は覚えることが山ほどある。毎日がそのくりかえしだ。
大人になったいま、「忘れる」「覚える」はどうなるか。
「覚えたことを忘れる」
学校でも家庭でも教えてもらえないこと。それは、「忘れる方法」だ。
『暗記科目』という言葉はあるが、『忘却科目』という言葉はない。
大人になって成長するには、知識を蓄える子供の頃とは逆の動きが必要だ。
なぜ忘却が必要か。それは「気づく」ためだ。新しいことに気づくには、
最初にいれた知識を忘れることが必要だ。
いわゆるデトックス、新陳代謝の基本原理である。
「定石を/覚えて2目/弱くなり」囲碁の格言である。定石とは最初に覚える基本の打ち方のこと。
強くなるために定石を覚えると、なぜか弱くなる、という、逆説的な真実への
警鐘だ。定石を一生懸命覚えると、実際打つときにそれを思い出そうという意識が
強くなる。その場で考える、がおろそかになって弱くなるのだ。これから成長していくには、昔覚えたことを一旦意識の下にしまっておく、
ぐらいの「忘れる」が必要になる。
「忘れない程度に、忘れる」
これは、新しくさまざまなことに気づくための、大事な技術だ。
「ふざけちゃだめです」囲碁で陣地のことを「目」というが、無駄な目、つまりどちらの陣地でもない場所
のことを「駄目」という。
そこから「やっても甲斐のないこと」「してはいけないこと」の意味になった。ふざけるのが大好きな子供に、「ふざけちゃだめ」と言って基本動作を
しつけるのは当然だ。
そして大人になって必要なのはこうなる。
「まじめにふざける」
まわりをみてみよう。新しいアイデアは、まじめにふざけている人から、
毎日湧き出ている。
「まじめにふざける」とは、固定観念や先入観から解き放たれて自由に遊ぶこと。
実際に自分でやってみるとわかる。意外と難しい。20年ほど前、カジュアルフライデーという習慣ができた。
これは見事に定着しなかった。
まじめにふざけられなかったからだ。金曜だけ皆おなじ恰好になった。
スーツを着ていったら課長に怒られた。社会人として不快感を与えない限り自由、
が定義なはず。
が、スーツを着ない日、となった。「自由」が規定となったのである。
なんともおかしなことになった。コンセプトと現実があわず、自然と消滅した。
「効率よくやりなさい」これが正しいと教わって大人になった。だが社会に出てみると、
その逆にサービスの差別化ポイントが隠れていた。「非効率だけどやる」
非効率だがやらなければならないこと。そこに気づいた企業が強い企業だ。
280円均一で人気の焼き鳥チェーン「鳥貴族」。価格勝負の大衆店だ。
どこよりも効率重視のはずだが、一番手間のかかる串うちを各店舗でやっている。
味への強いこだわりで非効率に挑戦している。
なんでも初心者のとき、最初に教わることがある。上達したあとは、
最初に教わったことの反対に、成長の種が埋まっている。
成長に必要だったことは、成長したあとに一旦忘れて、反対を向いてみよう。
まじめに生きることが悪いわけではない。
だが、ずっとまじめに、言われたことを守っていると、成長がとまる。大人はそのことに、なかなか気づけない。
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囲碁 教え方
上達の風景
ネット碁の席亭を13年もやっていると色々なメンバーと出会う。
みんな「もっと、はやく、上達したい」のかと思いきや、
こんな人も結構いる。
「なるべくゆっくり上達したい」
教えることを仕事にしていると、ついうっかりしてしまう視点だ。
一度上達してしまうと、下手な自分には戻れない。
上達する喜びを味わうのは、上級者になるにつれ難しくなる。
初心者がジューシーなりんごとすれば、
上級者は果汁がほとんど出ない芯だけだ。
初心者には楽しむ余地がたくさん残っている。
メンバーの数だけある「上達の風景」にあわせて
絵具やキャンバスを用意したい。 -
囲碁 教え方
「普通」が上達をさまたげる
起業したばかりの頃、経験豊富なシニアにこんなアドバイスをされた。
成功したければ、打率より打数を気にしよう。
何打席はいったか。これが大事だというシンプルな教えは、
上達を目指す人にもあてはまる。量をこなさなければ上達できない。
上達には「質より量」。簡単にわかる理屈だ。
だが実際は、上達を目指すときこう考えてしまう。効率よく上手くなりたい。
失敗したくない。
忘れたくない。これらのベースにある考え方は、「量より質」だ。
このなんの変哲もない「普通」の考えが、
量を増やせず上達しない原因となっている。ここに気づけるかどうか。
それは「普通」ではないかもしれない。
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囲碁 教え方, シニア
忘れないように、メモとらないで
87歳のシニアにPC指導をして8年が経つが、最近気がついた。
メモをとらせてはいけない。
コピーペーストや印刷、メール送信など、基本操作を
何度も何度も繰り返し教えてきた。
その都度しっかりメモをとるのを見て安心した。それは間違いだった。
メモをとったことに安心して覚えない。
そもそもメモをとったことを覚えていない。
だから操作がわからないときにメモを見返さない。「忘れるために日記をつける」
94歳の作家、外山滋比古氏の至言がある。
だからこういうことになるだろう。「覚えてもらいたいことは、メモをとらせない」
いままで何で気がつかなかったのか不思議だ。
教える側が覚えておくべき基本といえる。これももちろん、メモをとらないでおこう。
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囲碁 教え方
上達の兆し
囲碁教室『上達の約束』を始めて間もなく3ヶ月がたつ。
毎回生徒4-5人、講師2名の少人数制だ。
最近、今年の世界アマ日本代表の村上深さんが
新たに講師に加わり、教える布陣も整ってきた。
4回・8回・12回と3コース用意しているが、
皆さん継続してくれているのが、僕らの自信と喜びにつながっている。
そしてなんといっても教える側の「心のガソリン」は、
上達の兆しが見えることだ。
前打てなかったような手が打てるようになる。
これもその一つだが、僕が上達の兆しを最も感じるポイントは、
「質問の質」にある。
どのタイミングで、どういう内容を聞いてくるか。
毎回ワクワクしながら待っている。
*上達の約束
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