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席亭ブログ

お湯の味がわかる男

「今日のお茶おいしいね」

ある朝、何気なく言った一言に妻が驚きの目を見開いた。
「えっわかるの?」

「うんわかるよ。いつもよりお茶おいしい」

「本当?お茶おいしいなんて今まで言ったことなかったのに…」

昨日までポットで沸かしていたお湯を、今朝から南部鉄瓶で沸かすように
変えたらしい。しかしお茶はずっと同じまま。だから彼女は驚いたのだ。

「やっぱりな。俺はお湯の味がわかる男だからな」

半ば偶然の産物なのに、調子にのっていばり始めるのが底が浅い。

しかしまてよ。何気ない一言が自然に出たのは確かだ。
やはり俺は神の舌をもっているのかな。

数日後、妻が朝から不敵な笑みを浮かべていた。

「今朝はお湯は昨日と同じ鉄瓶で沸かしたけどお茶を変えてみたのよ。
あなたお湯の味はわかっても、お茶の味はわからないのね」