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席亭ブログ

2018年1月の席亭ブログ

  • 囲碁 全般, シニア

    味のわからなくなる男

    昨日は前日に続いて87歳のシニア宅でPCと囲碁指導だった。

    日曜は富士山に沈む夕陽を眺めながらだったが、
    月曜は一変、吹雪の大都会が窓の外にひろがった。

    いつも対局が始まり少したった頃、奥様がお茶をいれてくださる。
    昨日は桜茶に和菓子だった。

    本当は話をしながらゆっくり味わいたいが、
    対局中は盤面に気がとられてしまう。

    それでも一口食べた瞬間、これはうまい!と思ったのは覚えている。
    桜茶の薄い塩味が和菓子の甘味をひきたてていたのも。

    しかし味の記憶はすぐに「脳の別フォルダ」に仕舞われる。
    あとでそれを取りだすことはめったにない。
    対局中、僕は「味のわからなくなる男」になる。

    昨日いただいたのは、赤坂にある和菓子の名店、『塩野』の
    生菓子であることは知っていたので、あとで調べて驚いた。

    15種類ある「1月の和菓子(1個370円)」で
    これだけ1個700円(!)の『菱葩餅(ひしはなびらもち)』だった。

    説明にはこうあった。
    求肥餅の中には赤く染めて菱形に抜いた求肥と密漬けごぼう、
    そして優しさの中にもきりっと風味のある味噌餡がはいっている。

    いまさらながら昨日の味がよみがえってきた。

    あの中にはたしかに優しい味噌がいた。
    味噌はたしかにきりっとしていた。
    包んでいた求肥はたしかにほっぺたより柔らかかった。

    あぁ、かなうことなら碁盤の前ではなくもう一度…。

    もうひとつ。
    包装をあけたとき、ごぼうを楊枝と思って最初に抜きとり、
    しずかにお皿に置いたのを思い出した。

    *御菓子司 塩野 http://www.siono.jp/201801.htm

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  • その他

    3歳の記憶

    僕は2歳から4歳を山形の米沢で過ごした。
    冬は豪雪で家が埋まり、2Fから出入りしていたそうだ。

    かすかな記憶がある。
    遊んでいる最中、雪の穴に落ちてしまって父に助けられた。
    恐らく大きな声で泣いたにちがいない。

    写真や伝聞で作られた記憶もあるだろうが、
    楽しい最中に突然起きた「悲劇」は記憶の底にたしかにある。

    今日、久しぶりに東京は雪景色となった。
    二子玉川に住む5歳と7歳の2人の姪は、
    さっそく自宅バルコニーで楽しんだようだ。

    妹のほうの右足を見ると、この記憶は僕のよりも
    もっと確かなものとして刻まれるだろう。


    yuki

  • その他

    紙に書こう

    以前、鎌倉文学館で鎌倉ゆかりの文豪の直筆原稿を
    見る機会があった。

    芥川龍之介、夏目漱石、川端康成、与謝野晶子。

    どの原稿にも削除、挿入、書き直しなど、
    苦闘のあとがはっきり浮き出ていた。

    完成原稿でこれだとすれば、没原稿はどれほど
    クシャクシャになって部屋を埋めつくしただろう。

    書いたものを丸めるとき、頭をよぎるふがいなさ、
    口惜しさはいかほどだっただろう。

    ふと思う。

    100年前の作品がいまだ多くの人に愛されている。
    では100年後に今の作品が同じように読まれるだろうか。

    名作として評価され読まれる作品の量は限られる。
    “入れ替え戦”であの文豪たちに勝てるだろうか。

    書くという作業が、パソコンに向かって行うのが
    あたりまえになって20年が経った。

    いま忘れられつつある「紙に書く」が
    名作が輝く理由のひとつだとしよう。

    半歩でも近づくためにやるべきことは決まった。
    明日から僕も「紙に書く」をもう一度日々の営みに戻そう。

    このブログは別として。

  • 囲碁 全般

    大きくなったらわかる

    今から10年ほど前のことだ。
    毎年夏にアメリカ西海岸サンディエゴからやってくる
    2人の姪っ子が、

    ―アンクル明、あーそーぼー!

    と僕の部屋に入ってきた。
    当時2人は4歳と5歳。僕はちょうど会員と石音で対局中だった。
    遠くから妹の声がした。

    ―華(hana)、奏(kana)、
    アンクル明はお仕事中だから邪魔しちゃだめよ。

    ―えーっ、だってアンクル明、いまゲームしてるよ。

    あの時のショックはまだ覚えている。

    そうだよな。まだわからないよな。
    でも大きくなったらわかるよ。大きくなったら。

    昨日、16歳の華(hana)から1枚の写真が送られてきた。
    彼女はいま身長172cm。たしかに大きくはなった。
    だが写真をよく見ると…。

    あの時自分に言い聞かせたのは、間違いだったかもしれない。


    igo

  • シニア

    ただいま準備中

    国が進める「シニア活用」と中小企業の大きなテーマ「採用と定着」。

    この2つがぶつかって革新的な流れが生まれるといいが、
    よく考えると無理がある。

    これだけ世の中の変化のスピードがあがる中で、
    「シニアの再教育」という概念が社会にないからだ。

    ではシニア向けの教育の場をたくさん作ればいいのかというと、
    ことはそんな簡単ではない。

    知識・経験ともに十分なシニアがその場に集まる動機がない。
    「知識十分・意識不十分」なシニアが大勢いる。
    経済的にもそれほど困っていなければなおさらだ。

    現状は、シニアの視線が「うちへうちへ」
    (仲間うち、自分のうち)と向かっている。
    『世代遺産』が伝わることなく、日本中で日々消えていっている。

    自分の力をもう一度社会に役立てよう。
    世代を超えて伝えていこう。

    その気になって頂くためにどうやって火をつけるのか。

    いま準備中の『名脇役オーディション』について来月中旬、
    中野区の経営者の前で話す機会を頂くことになった。

    経営者側への発信に加えて、名脇役候補のシニアへの発信も
    仕掛けていきたい。

    4月からこれを毎月の定例会に発展させて、
    中野から全国に発信していきたい。