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席亭ブログ

2018年6月の席亭ブログ

  • その他

    動き出した時間

    よっひさしぶり!

     

    思わず小さくつぶやいた。
    修理に出していた腕時計が戻ってきた。

     

    3週間ぶりではない。
    20年ぶりだ。

     

    社会人になってすぐに買ったものが4年目に動かなくなった。
    時計をあわせようと説明書を読まずに
    適当にネジを動かしたのがまずかった。

     

    携帯電話を持ちはじめた頃だったので、
    「時間はこれでわかる」
    という言い訳で、壊したことにフタをした。

     

    それ以来僕は時計をしなくなった。

     

    左手首に久しぶりの感触だ。
    じっと秒針の動きを見ているとよみがえってくる。

     

    濃い青色の文字盤がひとめで気に入り、
    何度も売り場をいったりきたりした。

     

    店員の目を気にして、あまり興味のない時計も
    わざとのぞきこんだりした。
    新人には大きな買い物だった。

     

    僕は何を思って毎日を過ごしていたのだろう。

     

    すっかり止まっていたあの頃の時間も動き出した。



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  • その他

    魔法のことば

    当店にマニュアルはありません。

     

    時折目にするこの言葉にめっぽう弱い。

     

    なぜだかはわかる。
    自分にマニュアルがないからだ。
    教えるときも、人前で話すときも、旅をするときも。

     

    つれには「自由人」とよくいわれる。
    おそらく「勝手」や「いきあたりばったり」という意味も
    こめられていようが、そこは、それこそ「勝手」に、
    ポジティブに受けとっている。

     

    マニュアルがないとは、すべてをカスタマイズする覚悟だ。
    その日、その気分、その相手…すべてに。
    せっかく生きているのだから、そうでなきゃ面白くない。

     

    ここ2ヶ月、人生ではじめて腱鞘炎になやまされていて
    近所の「身体均整院」という、聞きなれないところの門を叩いた。

     

    右手首を治すのに、首や頭、腰や左手首の施術が念入りに始まった。
    僕の身体を全部知らなければ治せない、と言ってるようだった。
    会話をしながら次の施術場所と内容がきまっていった。

     

    再訪しようと帰宅後HPを見て気がついた。

     

    あの「魔法のことば」があった。

     

    *米木身体均整院 http://yoneki-kinsei.com/#clients

  • その他

    敵もさるもの

    いつもと同じメンバーでは成長がのぞめない。
    ここはリスクをとってでも変えないといけない。

     

    今夜決戦のW杯の話に聞こえるとしたら、それは偶然だ。

     

    来月中旬に米国から姪っ子たちが来日する。
    それにあわせて3日前、二十日大根をプランターに植えた。

     

    日当たりが限られる西向きベランダでは欄干が一等地だが、
    既に中玉トマト6鉢が鎮座していた。

     

    当エリア監督就任3年目の僕は、
    冒頭の決意をもって、メンバーチェンジを行った。
    赤い実をつけた「ルビーノ」を控えにまわし、
    小さな芽が密集する「二十日大根」を欄干レギュラーにした。

     

    その2時間後に事件は起きた。

     

    明朝食べごろと思われる赤い実の中央が、見事にえぐられ落下した。
    周囲の葉には黄色い汁が飛び散っていた。

     

    ゴールを決めたフォワードが、いや、この実を落とした奴が
    誰だかはわかっている。

     

    去年学んだ撃退法で被害はもう起きないはずだった。
    銀の細い糸を欄干に張って、鉢にはキラキラ光る円盤もつけた。

     

    だが今日は、奴のいやがる細い糸から離れ、光る円盤に
    太陽の光が届かない一瞬が狙われた。

     

    敵もさるものひっかくもの。
    そんな言葉が浮かんだが、奴はさるではなかった。

     

    とりだった。



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  • その他

    時代に遅れる人

    少し前の『カンブリア宮殿』でこんな素敵な言葉に出会った。

     

    とことん時代に遅れよう!

     

    京都のカバン屋『一澤信三郎帆布』の店主が言っていた。

     

    世界最古のゲーム「囲碁」を仕事にして
    いまだスマホを持ったことのない僕は、
    激しくうなずくしかない。

     

    洋室に畳を敷きわざわざ和室にして布団で寝起きしている。
    ふつうは逆だそうだ。

     

    これから建てる家も、床の間、掘り炬燵、縁側、濡縁、出窓と、
    時代遅れに見えるかもしれない。

     

    こうなったらついでに歳をとるのも遅れてしまいたい…

     

    どうやら精神年齢の歩みは、ちゃんと遅れているようだ。

  • その他

    いい加減な人

    知らないことを知っていたかのように話す。
    なるほどねーとしっかり相槌を打つ。

     

    たまに話が掘り下げられると、知らなかったことが、
    聞いていなかったことが、露呈する。

     

    周囲の人にはとっくにばれている。
    僕はかなり、いい加減だ。

     

    自覚しているのに直す気がない。
    それどころか誇りを持っている気配すらある。

     

    高田純次の『世界ぶらぶら』や『じゅん散歩』を録画しては、
    自分に足りない「いい加減」を確認する。

     

    いい加減。

     

    よく考えるとこれは不思議な日本語だ。
    普通に読むのと、前にアクセントをつけるのとでは意味が逆になる。
    ほかにあるだろうか。

     

    僕が目指しているのは、単なるいい加減ではない。
    「いい」加減な「いい加減」だ。

     

    と真面目な顔して力説しても、
    いまさら周囲には届かないかもしれない。

     

    まぁいっか。