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席亭ブログ

  • 囲碁 全般

    Y君の石音

    高校OB大会に毎回参加してくれたメンバーに中高同窓のY君がいた。

    今から33年前、彼と僕は、他の部員よりも遅く囲碁部に入ったので、
    既に有段者になっている仲間を追いかける形でお互い切磋琢磨の日々だった。

    中学3年、高校1年の2年間は「囲碁しか記憶にない」ぐらい没頭した。
    そのかいあってか、高校3年の時に選手3人の1人に入れるかどうか
    ギリギリの棋力にまで到達した。

    選手候補の高段者が20名を数える囲碁強豪校だったので
    まず母校で選手になるのが大変だったのだ。

    そしてリーグ戦の最終戦、最後の1席を争う形でY君と打つことになった。

    結果は僕がギリギリの勝利を収めた。嬉しさと申し訳なさが同居する
    不思議な気持ちを初めて味わった。対局後の彼が予想以上に淡々と
    していたので余計印象に残った。

    それから時が流れて、僕が石音を始めたことを知ると彼はすぐに
    会員になってくれた。仕事が忙しく常連メンバーとはならなかったが
    毎年新年にじっくり2人で打つのが定例となった。
    勝負は五分と五分で、勝ったほうはその年を気分よくスタートできた。

    今から4年前のクリスマス、突然の一報に言葉を失った。
    彼が酔ってホームから転落して亡くなったのだ。

    数日前の、新年もまた打とうという確認メールのやりとりが、
    まだ受信トレイのすぐ見れる場所に残っている。
    すぐには、彼とはもう打てない、という事実を受け入れられなかった。

    僕はその夜、石音から彼との棋譜を全て取り出して並べた。
    そうしないと心のざわめきを押さえられなかった。

    電子音だから全部同じ音のはずだが、やはり30年来の棋友である
    Y君の石音は、僕にはたしかに違って聞こえた。

  • 囲碁 全般

    高校生に戻るとき

    来年の3月に、9回目の『全国高校囲碁OB選手権』を
    開催することが決まった。

    大学のOB大会は色々あるが、高校のOB大会がないことに目をつけて、
    僕が2006年に立ち上げた大会だ。
    最近は2年に1度のペースで開催している。

    この大会は、母校の囲碁部員OBが集まる同窓会とは違う。

    高校時代に切磋琢磨したライバル高校同士、あの時を思いだしながら
    7人一組、3人一組で闘う団体戦だ。
    全国8高校、40名が集まる。

    大学生や社会人になって間もない20代の若手から
    60代のシニアまでが、母校の看板を背負う。
    その日の囲碁サロンは、皆それぞれが高校生に戻る場所となる。

    いままで何度も大会継続が危ぶまれたが、なんとか12年間続けてきた。
    30年来の囲碁仲間が集う機会は他にはない。

    僕は大会幹事としても、母校の監督としても選手としても
    この大会を楽しむことができるお得な立場だ。

    これからもゆるく続けていきたい。

  • 囲碁 全般

    過去を変えるゲーム

    今日はおとなり将棋界が羽生永世七冠誕生で盛り上がっている。
    ところで将棋と囲碁の違いを一言で、といわれたらどうするだろうか。

    盤上のコマ(石)が動くのが将棋、動かないのが囲碁だ。
    囲碁の石は、まるで時の流れのように一度打ったら取返しがつかない。

    そして囲碁の強い人は、
    「変えられない過去の一手」の価値を
    「変えられる未来の一手」で変えていくことが出来る。

    輝く未来のために、過去を再認識、再構築していくゲーム。
    僕はその囲碁から多くを学んで今日がある。

  • 囲碁 全般

    石音新年会

    僕の運営する『囲碁サイト石音』は、来年1月8日(月祝)
    東京麹町のダイヤモンド囲碁サロンで13回目となる石音新年会を開催する。

    毎年40名が集まるこの会は、実は石音関係なく、
    囲碁に興味のある人はどなたでも参加自由のゆるい囲碁会だ。

    囲碁のルールだけ知る入門者から高段者までが集い、
    その日のサロンは、今年も楽しい囲碁ライフにしようという明るい「気」と
    笑い声でいっぱいになる。

    「はじめまして、じゃないですね。ネットでいつも打ってますから」
    は石音ではお決まりの挨拶だ。

    毎年成人の日に開催しているが、以前東京で数十年ぶりの大雪になった。
    道は普通に歩けないほど雪が積もり、交通は大混乱だった。

    こういう日こそ家で炬燵にはいってネットで囲碁、石音の出番!
    のはずなのだが、席亭の日頃の行いのせいなのか皮肉なものだ。

    しかし、そんな大雪の日にもかかわらず、来なかった人が1名のみ
    だったのには本当に驚いた。シニアが半数をしめる囲碁会なのにだ。

    83歳の男性メンバーは、寒さで顔を真っ赤にして1時間遅れで到着した。
    「毎年楽しみにしてるからね」

    必死に集まったみんなの笑顔は、いつもよりも楽しそうだった。
    あの時の感激は今でもはっきり覚えている。

    *囲碁サイト石音 http://www.ishioto.jp/
    *石音新年会の問合せ・申し込みは sos@ishioto.com まで

  • 囲碁 全般

    88歳の気概

    僕が理事を務める(一社)全日本囲碁協会では
    毎年2月の建国記念日に大会を開催している。

    今日はその企画の打合せで中心メンバー、33歳から88歳まで
    8名が集まった。うち4名が80代だ。

    来年2月12日は、今までの内容を一旦全部白紙に戻して
    0から新しいものを創りあげることになった。

    過去を捨てる勇気。
    変わろうとする気概。

    年長者が率先して新しい、若々しい一手を打とうとする、
    気迫溢れるこの打合せは、これからもずっと僕の記憶に残るだろう。