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席亭ブログ

  • 囲碁 全般

    静かなトラブル

    今夜はひさしぶりに自社サーバーがダウンした。
    ここ1年ほど安定していたので、不意打ちをくらった格好だ。

    ダウンしたのが21時半頃で
    僕が異変に気づいたのがその20分後。
    あわててシステム会社に電話して22時頃に復旧した。

    今夜は電話もメールもなかったので気づくのが遅れたのだ。

    サーバーが停止すると対局が途中で出来なくなる。
    いつもならその直後からお客さんからの電話が鳴りやまない。

    僕は四六時中ネット上で監視しているわけではないが、
    今まではその電話でトラブルを即座に知ることが出来た。

    しかし今夜は電話が鳴らなかった。

    石音サーバーのトラブルを、自分のパソコンのトラブルと勘違いして
    いつも真っ先に電話をかけてきた京都のKさん。

    今夜も大変だろうけど頑張ってね、という電話を
    毎回一呼吸おいてかけてくれた常連のFさん。

    石音の取締役、つまり内輪なのに、いまの対局の記録はどうなるんだ、
    とお客さんと同じ目線で怒ってくれたSさん。

    3人とも今はいない。

    静かなトラブルは、本当ならほっとしていいはずだった。
    だが、予期せぬ寂しい気持ちが残った。

  • 囲碁 全般

    読書のきっかけ

    タイトル戦で記者が現場で書くものといえば、
    新聞掲載の観戦記事と相場はきまっている。
    だがそれが芥川賞を獲ったとすれば、刮目に値する話だ。

    将棋タイトルの最高峰、名人戦の舞台が高野山の金剛峯寺に
    セットされたのは、昭和23年のことだった。

    29歳の升田名人に24歳の大山が挑戦する名人戦の担当だった
    毎日新聞学芸部副部長は、将棋そっちのけで決戦の舞台の2階で
    小説を執筆していた。

    『闘牛』は2年後、芥川賞を受賞した。
    小説家・井上靖は、高野山の将棋名人戦で誕生したのだ。

    まるで高尾―井山の囲碁名人戦で、担当記者、又吉直樹が
    『火花』を書いていたみたいな話だが、それを知って以来、
    僕の中で彼の著作を読んでみようというボルテージが一段あがった。

    いつかいつかと思いながら、自分の中でずっとそのきっかけを待っている本。
    数えたことはないが、数十冊はあるだろう。

    その一冊、『天平の甍』にじっくり向き合ってみた。
    年末に琵琶湖周辺を歩くつもりなので、次は『星と祭り』も読んでみたい。

  • 囲碁 全般

    友の石音

    囲碁を趣味にして30年、仕事にしてから12年が経った。

    1局2時間近くかける長考派ながら仕事で5千局、趣味で5千局、
    あわせて1万局は打っただろう。

    久しぶりに友人と打つと、対局がすすむにつれて
    「あーいま奴と打ってるんだな」と感じる。
    お互い無言でも盤上で会話している。

    囲碁は車の運転と同じく、自分を隠せない。
    着手にも考えるタイミングにも癖が出る。

    この10年来の友人であり、一緒に若者への囲碁普及に燃えた仲間であり、
    僕のサイトのお客さんでもある8歳下の彼と3年ぶりに打った。

    ネット碁なので石の音はパソコンから機械的に響いてくる。

    しかし「友の石音(いしおと)」は
    僕の耳にはしっかりそれとわかるものだった。

    これが、業界で唯一プロフィールを公開して
    対局する囲碁サイト『石音』を立ち上げた原点だ。

    *囲碁サイト石音 http://www.ishioto.jp/

  • 囲碁 全般

    上達のきっかけ

    何かをきっかけに興味をもって扉をあける。
    あけてみたらさらに興味が沸いてくる。

    この循環を起こすのは僕の場合「言葉」であることが多い。

    ある番組で作庭家の「ねばりのある石」という言葉に出会った。
    初めて聞く表現で耳が立った。

    ねばりがあるとは、石に重さ、重量感があるということ。
    それは石の大きさ、重さではなく、性根、魂が入っていることだという。

    どれが「ねばっていて」
    どれが「ねばっていない」のか。

    実際目にしたとき、感じられるかどうか。

    心の奥で、早く庭を、石を見て確かめたいという声が聞こえる。
    いつ消えてしまうかわからない小さい声だが、
    この声が消えるまえに、ねばりのある石に会えるかどうかが
    次のステップに進む鍵となる。
     


    さて今週水曜夜に、渋谷で2回目のセミナー『上達の約束』を開催する。

    「上達」について、囲碁に限らず、上達したい人、
    させたい人と一緒に座談会形式で考える。

    自分にとって上達のきっかけは何か。
    それが見つかる場にしたい。

    セミナー『上達の約束』(11/22渋谷)~本気で上達と向き合う~
    https://peraichi.com/landing_pages/view/jotatsu-promise

  • 囲碁 全般

    変わる力

    僕は、創立三年が経過した(一社)『全日本囲碁協会』の理事を
    務めている。中心メンバーは皆80代、理事長は88歳だ。

    これだけの高齢メンバーが情熱を傾けて運営する全国組織もないだろう。
    囲碁の魅力の一つといえる。

    今週は父よりはるかに年上の理事2人と
    それぞれ個別に膝をつきあわせて話をした。

    今までは中心メンバーの驚異的な熱意でもってきた組織だが、
    いつまで続くかはわからない。

    ではすぐに僕らが引き継げるかといえばそんな簡単な話ではない。
    世代が離れすぎているのもあり課題は山積だ。

    今後について2時間、3時間、激論をかわして
    はっきりわかったことがある。

    僕らはいま「変わる力」が試されている。
    もう一度原点にもどって、変わる力を奮い起こす時なのは間違いない。