Blog

席亭ブログ

  • PXL_20230922_062043283-300x225

    ひとつの旅で3度も自分の小ささを実感するのも珍しい。

    1度目は、屋外五重塔では日本で1番小さな、
    室生寺五重塔(国宝)の前で。(行き当たりばっかし31)

    2度目は、木造では日本で1番大きな、長谷寺の
    十一面観音菩薩立像(重文)の前で。(行き当たりばっかし32)

    3度目は、東大寺の大仏殿につぎ日本で2番目に大きな木造建築
    (明治以降の近代建築はのぞく)といわれる、
    金峯山寺の蔵王堂「国宝」の前で。

    高さ34mという。現代でいえばマンション9階建てなのに木造、
    ということだ。縦横も36mの正方形、つまりほぼ立方体の
    この建物が今から400年以上も前に、秀吉の力で建て直された。

    中には68本もの巨木の柱があったが、驚くべきものを目にした。
    どの木もすべて面どりも製材もされていない。
    ただ木の枝を落としただけの、でこぼこだらけの杉やひのきの
    巨木だった。こんなのは他の寺社であまり見たことがない。
    仏教とはちがい、日本古来のオリジナルな宗教といえる修験道。
    その整地にふさわしい建物だ。

    なかには、ナシやツツジ(!)の巨木もあった。ツツジの巨木…。
    自分が53年生きてつかんだ常識からは、余裕ではみ出している。

    外に出て誰もいない蔵王堂の前で両手を広げてみた。
    が、ぱっと見ると、蔵王堂だけを写したように見える写真だ。
    自分の小ささがきわだった格好である。

    いや、待てよ。
    そもそも、自分をちょっとでも大きく見せようだとか、
    はるか昔から風雪に耐え鎮座している塔や建物と比べようとか、
    思うこと自体が、猛烈に小さいのではないか。

    翌朝6時半、この蔵王堂で「朝勤行」に参加して
    山伏たちの勇壮なほらがいの音を聞きながら、気がついた。

  • IMG_8244-225x300

    前に集中すればするほど、後ろがおろそかになるぞ。

    と仏様から諭された。
    399段、長谷寺の重要文化財「登廊」(のぼりろう)の
    誰もいない瞬間を撮った。まさか自分が撮られているとは。

    お参りするのに長い階段を登るお寺は多いが、
    こんなに長く屋根がついているのも珍しい。

    何度か建て直されて現在残っているのは江戸時代と明治のもの
    らしいが、この階段を千年前から大勢が登ったのは間違いない。
    室生寺の700段往復をしたばかりで、少しバテ気味ながら
    自分もその1人になったことに喜びを感じる。

    登った先にある本堂(国宝)は徳川家光がつくったもので
    長谷観音の根本像「十一面観音菩薩立像(重要文化財)」が
    鎮座していた。背の高さが10mを超える大きさに圧倒された。

    根本像というが、字だけ同じこちらの小ささがまたしても
    浮かび上がることになった。

    長谷寺 登廊
    https://www.hasedera.or.jp/etc/noboriroh.html

  • PXL_20230921_025832495-254x300

    猛暑が一段落して秋の気配が近づく頃奈良を旅してきた。

    朝5時に起きて7時発の新幹線に乗り、京都から近鉄特急で49分、
    大和八木駅で降りて車を借りる。
    昼前にはシーズンオフでひっそりとした名刹「室生寺」で、
    屋外では日本一小さい(16.1m)国宝五重塔に向き合っていた。
    午前中の過ごし方としては今年1番だ。

    この塔は1200年前からここに立っているが、1998年の台風で
    樹齢600年、高さ50mの巨杉が倒れて屋根が損壊した。
    塔が出来て600年もたってから芽吹いた1本の杉が、
    その後600年で塔の3倍もの大きさになり襲いかかったわけだ。

    幸いなことに別の巨杉が倒れた杉を一部支えて全壊を免れ、
    修復されて今の姿となっている。

    人の手が加えられていない杉木立の中、奥の院まで700段の
    階段を往復した。誰にも会わなかった。蒸し暑さがピークに達し
    汗だくで降りてきて再度対面した塔と一緒にパシャリ。

    遠近法で同じ大きさに写った。

    20倍を超える年齢差もさることながら、その器の大きさを
    もとより比べるべくもなく、かえって自らの小ささが目立つ
    1枚となった。

  • その他, 旅行記

    行き当たりばっかし(30)

    GnB1BZ6gSKlcm5HXUaiooSQuWlIRbqCpo6WU9k79-300x183

    料理のよしあしは、その中身もさることながら、
    誰といつ、どういう状況で食べるかによる。

    これが映画にもあてはまることがよくわかった。
    先日この10年で1番の映画に出会った。

    『トップガン マーヴェリック』

    は映画館で2回、DVDで5回観た。
    これがあっさり更新だ。

    『きっと、うまくいく』
    2009年のインド映画。

    これは2022年正月のNHK-BSで放送された。
    友人が昔薦めていたなぁと思い出して、CMもないし
    まぁいいかと軽い気持ちで予約した。

    なぜいま観る気になったのか。

    サイトを運営して18年2ヵ月、最大のピンチに陥っていた。
    いままで2日以上止めたことがなかったが、今回5日以上に
    わたりストップとなった。

    1時間でも早く再開させたいが、自分が出来ることがあまりない。
    待つのみだ。こういう時間は経つのが遅い。

    他の事をしようにも、仕事はもちろん、読書、食事、睡眠をふくめ
    能動的な動きが必要なものは、どれもなかなか集中できない。
    あまり経験したことのない状況だ。

    そこで、完全受け身になれるもの、映画を思いたった。
    この「タイトル」に引き寄せられて深夜、再生ボタンを押した。

    2時間51分。長めのはずが、あっという間に過ぎてくれた。
    鑑賞後の気分は最高だった。ビフォーアフターでこんなに違うのか。

    映画の冒頭、鍵となる日付が放送されるが、それがSEP.5。
    僕が現実逃避でテレビの前に座ったのは9月5日。

    行き当たりばったりも、時になんかの縁を生む。

    ということかもしれない。

  • その他, 旅行記

    行き当たりばっかし(29)

    6b5f91_b7a503ee775f4d34b5ee3329dcbc30c2mv2_d_4032_2688_s_4_2-300x296

    大人の駄菓子屋
    食の玉手箱
    楽しい おいしい 身体にやさしい

    看板にいつわりなしだ。
    ワクワクがとまらない食の隠れ家的セレクトショップを見つけた。

    吉祥寺の千恵蔵(ちえくら)さん。

    またもや店主と話し込んだ結果、このお店は創業13年目。
    サラリーマン時代、営業で全国各地をまわっているうちに
    各地の美味しいものに出会い、自分が感激したもの「だけ」を
    300点集めてお店にしたという。

    どんなジャンルであれ、人であれ、場所であれ、この「熱量」
    に魅かれてファンになる。

    こちらが1品手にとるごとに、そのものの魅力、ここに並んだ
    背景を丁寧に説明してくれる。

    ふらっと立ち寄った最初の訪問のときは、気づくと買い物かごが
    いっぱいですごい重さになった。8千円で送料無料、に魅かれ、
    結局1万5千円の大人買いに。

    先日、母の傘寿のお祝いにサプライズでこのお店から10点ほど
    詰め合わせて贈った。
    ふりかけるごま油、黒豆そうめん、ゆば丼、薬師延命酢…。
    母のはずんだ声の電話が嬉しかった。

    これからも年に3回は訪問する、にちがいない。

    吉祥寺 千恵蔵さん
    http://chiekurasan.wixsite.com/chiekurasan