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根本席亭ブログ 500人の笑顔を支える、ネット碁席亭日記 囲碁の上達方法やイベント情報など、日々の出来事を発信していきます。


「昨日ね、大丸のエレベータで『これは障がい者とシニア専用ですよ』

って
店員に言われちゃったのよ」



笑顔の2人は80代のご夫婦。

見た目が特に若々しいのは確かだ。



「私達がシニアじゃなければいったい誰がって話よね」



青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ



サミュエル・ウルマンの詩がうかぶ。



店員はきっと心の若々しさを感じたのだろう。



先週末、はじめてお墓の引越しを経験した。

祖母父、曾祖父母の4人が眠るお墓を祖父が懇意にしていた近くのお寺の

地下納骨堂に
移したのだ。



お墓の下には人が立てるほどの深さがあり、そして水が20cmほど

溜まっていたのに驚いた。
このお墓はつくって30年以上が経っている。

どうしても湿気が侵入するという。

骨壺に入ってるとはいえ、冷たかっただろう。



祖父の骨壺を開けて確認する。愛用の眼鏡が懐かしかった。

そして久しぶりに会えた気がして
嬉しくなった。



元気な祖父母の想い出は自分が学生の頃が中心だ。

いくら高齢化が進んでいるとはいえ、自分が老いを意識しだす中年以降は、

なかなか会える存在ではない。




しかし自分が何歳になっても、想いだして語りかけることはできる。

想い出の井戸があることは幸せだ。




そんな井戸を掘ってエッセイを書いてみたくなった。


2017/09/18

脱敬老


敬老の日に思う。



子供の頃から、お年寄りは敬いなさいと教わって僕らは育った。

しかし「敬う」の本質は教わらなかった。



なぜそう言えるのか。



それは「〇〇を敬いなさい」という教えそのものが「敬う」を

理解していないからだ。
敬うとは自発的なもので、強制されるものではない。



敬老を教える際の例で「電車の中で席をゆずる」があった。

だがここで教えるべき精神は「敬う」ではなく「思いやる」だ。



シルバーシートに座っている元気なシニアが、体調の悪そうな若者に

席をゆずってもいいし、シニア同士でゆずりあってもいい。


大事なのは年齢関係なく思いやる心だ。



「敬う」の本質から離れて「敬語」や「お辞儀」といった技術が

広まった結果、それらは感情の伴わない自己防衛の道具となった。



こうして「敬老」が「敬老しない社会」を創ってしまった。



では僕らはこれからどうすればいいのか。



「敬う」から始めないことだ。

「敬う」をゴールの一つにすることだ。



人が人と触れ合い、感情のやりとりが密になるに従って湧いてくる

親しみや友情。その向こうに自然と生まれるのが
「敬う」なのだ。



昔に戻ると新しい。



中村勘三郎の言葉だ。自分の忠臣蔵は、親父の前の台本を使っているのに

新しいと言われるのが
面白いと言っていた。



そういえば、オープンカフェって20年ぐらい前から流行ったが、

時代劇を見る限り江戸時代の茶店は
皆オープンだった。



哲学者ヘーゲルは「物事の発展は古いものが新たな価値とともに

復活しながら起こる」(らせん階段的)
と言っていた。



これから「新しさ」を感じるネタは江戸時代に多くヒントがある。



江戸時代は「老」が大事にされる社会だった。

偉い人は「老中」「大老」と呼ばれた。



そして「老後」とは言わず「老入(おいいれ)」と呼んで、

「老」を終着点ではなく入口と捉えて前向きだった。



現在、「老」が本当に尊ばれているとは言い難いが、

これから「老」をポジティブに捉える、新しい価値観が

どんどん生まれていくだろう。



夕方小雨がふるなか、近くの神社で開催の縁日に妻と突撃した。



この近くで小学生3年生から中学2年生まで暮らしていたので、

30年ぶりにまた同じ
縁日にきている。



焼き鳥屋台の後ろにテントが張ってあって、座って落ち着ける場所があった。



狭いスペースに丸椅子2つ。雨があたらないように僕らは小さくなりながら

買ってきた
ばかりのタコ焼きと焼き鳥をつまんだ。



「お母さんにはないしょだよ。こういうところで買って食べるのに

うるさいから」




30数年前、親父が僕にこっそり渡してくれた500円札を想いだす。

あの時の500円は、僕にとって大きな
プレゼントだった。



いつも母より厳しい父が、この時は味方になってくれたので、

余計に覚えている。



そんな話を妻としながら、ふとこんな言葉が自然と出た。



「懐かしいものがあるって幸せなことだなぁ」


 

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