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根本席亭ブログ 500人の笑顔を支える、ネット碁席亭日記 囲碁の上達方法やイベント情報など、日々の出来事を発信していきます。


別冊太陽という本がある。

雑誌サイズで迫力ある大きい写真が満載だが

ハードカバーの写真集ほど「かちっと」はしていない。



そんなちょっとジャケットを羽織って近所に贅沢ランチを

しにいくような本が、本屋の棚で
偶然目にとまった。



『別冊太陽 星野道夫』


20171114hoshino



彼とは27年を超える付き合いだ。

付き合いといっても、勝手にこちらがずっと親近感を

覚えているだけだが、
それには理由(ワケ)がある。



彼が執筆中の本の構想を練りながら

アラスカ、
フェアバンクスの街を歩いているとき、

偶然同じ日、
僕もそこにいた。



そのことを20年後、彼のエッセイを読んで知った。

ひょっとして、あのマイナス25℃の街角ですれちがったかもしれない。

胸が熱くなった。



この別冊太陽、今まで何度か目にしたことのある写真と

ふたたび会えたのも嬉しかったが、


巻末に載る奥様の小エッセイ『旅のつづき』もよかった。



僕もまだ、あの旅のつづきをしている。



ランチのあと、近くのカフェにはいった。

今日で2度目の訪問だ。



苦みの一番強い表示のある「スーパーアロマ」を希望したところ

品切れで、次に苦いという
お薦めの珈琲が出てきた。



四谷のレストラン三国に卸している豆だという。

開店直後でまだ暇そうなマスターが話かけてきた。




「いい珈琲は、砂糖をいれてみるとわかりますよ。

苦みがコクにかわります」




いまこのテーブルに「へぇ」ボタンがあれば続けておしている。

いい珈琲は砂糖を入れずに飲むものだと思っていた。



「安い珈琲に砂糖をいれると、苦みは舌の両側に残って甘いだけ。

でもいい珈琲だとしっかり
一つの味になるでしょ」



ひさしぶりに砂糖をいれて一口飲んで驚いた。

うーむ。確かにその通りだ。



ブラックで半分飲んだあとにスティック1本追加だから

標準の倍の甘さのはずだ。しかしそんなに甘さは感じない。

別の味、香りがたっている。



イタリア人がエスプレッソに砂糖をたくさん入れる理由は

これかもしれない。



SMBカフェ(中野坂上・新中野)




https://bankoku-coffee.jimdo.com/直営カフェ/



どこか旅に出ようとなったとき、優先順位の一番には来ないが

これが
あるとグンと味がひきたつようなもの。



これを“旅のスパイス”と呼ぶとしたら僕には2つある。



1つは国宝。もう1つは寅さん。



「国宝」は数年前から僕の中でゆるやかに興味が上昇中だ。

旅先でお堂や仏像、書画
などに偶然会えたら、それはもう特注料理

の比ではなく得した気分になる。



最近だと福井の永平寺で観た『道元の坐禅を勧める書』がそうだった。



そして「寅さん」とはそのロケ地のこと。

何度も同じシーンを見ているとその場所への憧れは強くなる。

京都に行ったとき、丹後の伊根まで2度も足をのばしたのを思い出す。



この2つのスパイスを同時にふりかけられそうな場所を最近みつけた。



まだ行ったことのない琵琶湖周辺を近いうちに歩いてみようと思う。



囲碁を打っていると、相手がどのタイミングでじっくり考えるかで

相手の強さがわかる。




だいたい3パターンある。



一手一手じっくり考える、

ピンポンのようにすぐ打ち返す、

じっくりとピンポンの混合、この3つだ。



混合タイプも、どこでじっくり考えるのかで強さがわかる。



自分の失敗に気づいてから考えるのか、

失敗しそうな手前で考えるのか。



失敗しそうな手前を見分ける力が囲碁の力といえる。

これは囲碁に限らずいえることかもしれない。



今日対局した小学2年生の男の子は、棋力は初段ながら

見事なタイミングで
あちこちで手が止まった。



こちらがワザを仕掛けるちょっと前のタイミングで、

いままで打っていたポンポン打つ
リズムを崩して

じっと腰を落ち着けて考えるのだ。




この落差、このタイミング、とても8歳児とは思えなかった。

この子の成長が楽しみだ。



最初は高校の世界史の授業だった。

いつか著作を読んでみようと思った。



それから時が20年近く流れたある日、北京の街を独りで散歩していたら

偶然その人の博物館の前を通りかかったのでふらっと入ってみた。



平日の昼間、誰もいない建物の中をゆっくり見てまわった。

実際に暮らしていた家も移築されていて、使っていた机や

ベッドもそのままだった。



忘れていた興味が静かに沸いてきて

帰国後にその人を解説した新書を読んだ。



それから10数年たったある初夏の日。

恩師が眠る鎌倉円覚寺の境内の一角にモクレンの木があった。

「その人」から贈られた木だと説明書きを見つけて驚いた。

それも恩師が生まれた昭和8年のことだった。



そして先日、新橋駅前の古本市で偶然目にとまった本があった。

26年前のものだが、新品同様の綺麗なもので200円。

すぐに財布を開いた。



『魯迅居断想』 阿部正路



その人とは魯迅。中国の文学者、思想家だ。



この本を読み終えたあと、30年来の満を持して

彼の著作とむきあうつもりでいる。


 

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